個性豊かな才能が大集結! ヤンマガ最高峰の新人賞!!
ちばてつや先生総評
どの作品も画力があり、緻密でリアルな、表現力豊かな作家が揃いました。ただ、皆すべてのコマに力を入れすぎており、お話も絵も濃く、重く、読みづらくなってしまっていたのは残念。普段の日常は軽く、ここぞ!!という場面をリアルにしっかり描きこむ、というコントラスト&リズムを覚えるとよいかと思います。これからが楽しみな作家ばかりでした。
大賞 賞金100万円+ヤンマガ奨学金60万円
『美人は3日では飽きない。』
石田ゆう
24歳 福岡県
ストーリー
出逢いを求めて男女が集まる居酒屋で、ハイスペック男と並んで切ない思いをしているフリーターともや。美人に対してコンプレックスを持つ彼だが、酔いつぶれていた美女を家まで送っていくことになってしまう。彼女の家のドアを開けたことで、彼の世界はゆっくりと広がっていく。
ちば先生の選評
ちょっと卑屈で自己評価が低い現代の若者たちの、何とも言えぬ愁いを帯びた表情や演出、画力に非凡さを感じるね。あんなに望んでいた「就職」がやっと決まったのに、ここで断るのか!! と読み手の皆がハラハラ、ドキドキ、イライラもしたと思う。が、それほど大事な人を見つけた二人の未来に一縷の光を感じさせていて少しホッとする、読後感を貴重とするかな。
2021年5月31日(月)発売 ヤングマガジン27号掲載!
優秀新人賞 賞金50万円+ヤンマガ奨学金60万円
『愚狗の子』
大山満千
33歳 神奈川県
ストーリー
実の父親に殺されそうになっていた少年ミチオは、殺し屋のタオに命を助けられ、それから自身も殺し屋としての道を歩み始める。殺し屋の才能を開花させていくミチオを見てタオは一抹の不安を覚えるが、不器用な男同士の意思疎通は上手く行かず、二人の関係は危うさを増していくのだった。
ちば先生の選評
非日常な殺し屋の裏社会を超リアルなタッチで克明に描いているね。主人公「ミチオ」の両親も只者ではないが、父親殺しをさせた「タオ」も焼き鳥屋の「おやじ」も強烈な個性の持ち主で、見るものをぞくっとさせる凄みを感じさせる表現力は魅力だ。キャラクターのセリフもハードボイルド的センスで一気に読ませてくれた。導入部のタオから「父を殺すか自分が死ぬか」とピストルを渡された時、何故タオに銃口を向けなかったのか、その一点が心に引っかかったままなのが残念。
準優秀新人賞 賞金30万円
『たたかうおじさん』
あおいりか
27歳 茨城県
ストーリー
42歳独身の男・正和は、20年間ずっと、かおりという女性に片想いをしている。想いを伝えることができず、ひっそりと差し入れだけを続けている正和だが、ある日かおりの娘である愛梨にストーカーだと勘違いされてしまう。最悪の出会いをした二人だが、誤解が解けた後はかおりに20年越しの想いを伝える作戦のパートナーとなり協力することに。
ちば先生の選評
とてもいい話なんだけどな‥。何年も前から、知り合ってはいたけど、告白できない健気なおじさんのとる行動が、可愛いのだが少し唐突でキャラクターの気持ちに入っていけなかったぞ。作者としては話を面白くしようと、ちょっと演出をオーバー気味にしてしまったのかな。もう少し静かな展開にして、最後にホッとさせるくらいにした方が、読み手の心に沁みた内容だと思うよ。
準優秀新人賞 賞金30万円
『ゆけ!日果さん』
井戸畑机
26歳 東京都
ストーリー
何でも器用にこなせるが故に、予定をパンパンに詰め込んでしまう日果さん。そんな彼女は母親の気まぐれで、南極の郵便局で働くことに。日本と大きく違う環境に戸惑いながら、それでも彼女は自分らしく南極に適応していく――。
ちば先生の選評
主人公のキャラクターにとても良い感じの個性と魅力を感じたよ。ラジオ体操の歌に合せた導入部の演出や、セリフのやり取りにリズムがあって入りやすかった。広大な南極の表現も見事。只、日果の日課、ルーチンにこだわる主人公を通じて、読者に何を伝え、感じさせたいのか? 作者のメッセージが伝わりにくかったな‥と惜しまれる。
準優秀新人賞 賞金30万円
『あっけ』
登坂一颯
21歳 東京都
ストーリー
俳優の卵・有間は25歳になっても芽が出ずに焦っていた。そんな中、ハウスクリーニングのバイトで訪問した老人の家で、2000万円もの大金を見つけてしまう。「これがあれば10年は俳優業に専念できる」そう考えた有間は、気づいたときにはその金を自分のものにしてしまっていた――――。
ちば先生の選評
登場人物のひとりひとりの生き様や夢がたくさん凝縮され、詰まっている話なので、ついセリフも多くなり、とても濃く重い作品になってしまった。背景のごみ屋敷の描き方やおばあさんの表現、主人公の成長など、魅力ある演出や素質があちこちに見えて、これからが楽しみな作家。
-
佳作 賞金20万円
『完璧な庭』
小野未練
21歳 愛知県
選評
とても独特な世界観を持ちながら、現実と繋がっているようなリアリティのある作品。粘菌によって人でなくなった姉には驚いたが、”足を治さない”という一点でドラマとして成立していた。吹き出しの位置がガチャついているページが多かったので、読みやすさにもっとこだわってほしい。
-
佳作 賞金20万円
『ボーイズ・ピー』
たなまん
25歳 東京都
選評
バカバカしいノリと、男同士の友情と、青春の笑いや悲しさが入っていて、贅沢な作品だった。是非とも世に出したい才能。親友に変装がなぜバレないのかなど、リアリティ面で作り込みの甘さが気になり、物語への没入感が阻害されてしまっていたのが残念。