個性豊かな才能が大集結!! ヤンマガ最高峰の新人賞!!
ちばてつや先生総評
今回もオリジナリティ溢れる作品が多くそろっていたね。どの作品にも読者を驚かせてやろう、楽しませてやろうという狙いがあって読んでいてワクワクさせられたな。また演出力も高く、特に見開きや大コマを効果的に使った作品が多くて、読んでいて楽しかったね。でも、一度読んでわかりにくい部分があったのはもったいなかったね。漫画はサラッと読んでも楽しめなければいけない。驚かせてやろうという狙いのために、設定が複雑化してしまったり、説明が足りていなかったりする部分があって、入り込みづらかったのが残念だったな。読者は少しでも「分かりにくい」と思うと、そこで読み止めてしまう。だからこそ、どうやったら分かりやすくなるか、読みやすくなるかを最後まで考えてほしいな。
大賞 賞金100万円+ヤンマガ奨学金60万円
『DESERVE TO LIVE』
わらいガため
21歳 神奈川県 50P
ストーリー
任務中に深手を負ってしまった殺し屋・日遊間ビンは、偶然逃げ込んだ森の中で、異形の生物・オズと出会う。自らを「もりのけしん」と語るオズに助けられ、ともに過ごす中で、命に対して真っ直ぐに向き合うその姿勢に、ビンは次第に憧れを抱いていく。しかし、そんな彼女の元へ、敵対組織の復讐者の魔の手が忍び寄っていた。
ちば先生の選評
殺し屋が森の奥に逃げ込んだことで、森が荒らされ、自然が汚され「命」を愛した森の精が怒り狂うという場面は、息をのむほどの迫力があるね。一度読んだだけで物語がスッと入ってきて、とても読みやすかったのもよかった。ただ人物も森の自然も動物も、ちょっとタッチが硬いのが惜しまれるね。肌のぬくもり、樹木や湿った森の空気の表現にもうひと工夫欲しかったな。
2020年6月15日(月)発売 ヤングマガジン29号掲載!
優秀新人賞 賞金50万円+ヤンマガ奨学金60万円
『オナ能』
外山竜耳
33歳 東京都 50P
ストーリー
性欲を我慢することで発現する超能力、その名も「オナ能」。そんな稀有な力を持つ高校生・梅村にある日突然、政府要人より“依頼”が舞い込む。その内容とは、7日後に地球に直撃する超・巨大隕石を「オナ能」を使い阻止してほしいというものだった。力を高めるため1週間の禁欲生活を送るハメになった梅村。果たして彼に日本を‥いや、世界を救うことはできるのか!?
ちば先生の選評
若者のエネルギーは底知れぬパワーを秘めているということを、バカバカしいほど真剣に描いた奇想天外な作品。キャラクターは個性的で魅力があるし、読者を喜ばせようとする姿勢も演出力もそろっていて、なかなかのエンターテイナーだね。これだけの力量があるなら、若者のおバカな日常エピソードも読んでみたいな。
優秀新人賞 賞金50万円+ヤンマガ奨学金60万円
『ジジババデスゲーム』
羽流木はない
28歳 東京都 32P
ストーリー
ある日、同じ職場の介護福祉士で密かに想いを寄せる神代さんから飲みに誘われることになった岡部。舞い上がる岡部だったが、そんな彼に告げられたのは介護先の老人たちにデスゲームを仕掛けるという「ジジババデスゲーム」への参加依頼だった!?たった2人で実行する前代未聞の計画。果たしてその行方とは‥‥。
ちば先生の選評
介護老人たちの個性やリアルがとてもよく伝わってくる。老人たちは普段から軽蔑しあっているのだから「デスゲーム」に取り込まれて殺し合いを始めるが、体力がないので中止。最後はお互い助けあうような話にしたら‥などと妄想が膨らむ。この新人さんの実力なら、介護の世界を面白おかしく描いた作品も、もっと読んでみたいぞ。
優秀新人賞 賞金50万円+ヤンマガ奨学金60万円
『星一の女』
うらたにみずき
22歳 岡山県 46P
ストーリー
一目見るだけで、その人間の世間の評価が5段階の星になって見える高校生・藤沢。星3.5以上の高評価の友達に囲まれ、何不自由ない高校生活を送っていたが、そんな彼の元に星1つの女性教師・三好が転任してくる。星1つと知りながら深い関係になっていく2人。しかし、ある日突然三好は学校を辞め、藤沢の前から姿を消してしまう。
ちば先生の選評
最初はキャラクターに「☆」や数字がまとわりついて煩わしく感じたが、読み進めるうちに少しずつ面白く、ラストは感動させられたな。「☆5」で頑張ってきた主人公も、これから「☆」を減らすだろうが、自分らしい生き方をしていくだろうと感じさせる余韻は心地いい。「しっかり正直に生きろよ」と応援したくなる読後感も良かったね。それだけに、冒頭が読みにくく、戸惑わせてしまうところが残念だったな。
準優秀新人賞 賞金30万円
『明日ハレルヤ!』
クリスティー田村
21歳 東京都 44P
ストーリー
目立たない大学生活を送る桑野は、校内でオナニーにふけっていたところをイケメン同級生・安田に撮られてしまう。それをネタに10万円を要求された桑野は、友人の逢坂と共に安田の弱みを握り返すことで逆襲しようと試みる。そんなある日、安田が女子高生の盗撮写真の売買をしている現場を目撃した2人。それをネタに安田を呼び出すことにするが‥‥。
ちば先生の選評
現実を生きる若者たちを描くリアルな話で、人物や背景、演出に光るものがあったね。ただ、恥ずかしいところをスマホで撮られたことより、それを元手に同級生を恐喝する方がよっぽど他人に知られたくないほど恥ずかしく罪深いことのはず。その行動に友人を巻き込んでまで必死になる動機が、どうにもなじめないまま読むことになってしまったのが残念だったな。主人公が悩んだり、行動を起こす「きっかけ」だけは「リアル」を大事にしたいね。