多彩なジャンル、幅広い才能が大集結! ヤンマガ最高峰の新人賞!!
ちばてつや先生総評
今回はいろいろなジャンルの作品を読むことができて楽しかったな。また若い方だけでなく、50歳での初受賞の方もおられて、幅広い年齢の人が応募してくれたことが嬉しかったね。どの作品も自分の描きたいものに真っ直ぐで、読んでいて素直に「楽しい」と感じさせる才能ばかりでした。ただ、描きたいテーマが詰め込まれ過ぎているところが気になったかな。誰に感情移入すればよいのか、どこに焦点を当てて読むのかが分かりにくい作品が多かったのは残念だったね。漫画というのはじっくり味わって読むものじゃなくて、サラッと読んだときにスッと入って来る感動や笑いを楽しむもの。読み切りを描くときは、1つのテーマに絞ってまとめることを意識してほしいな。
大賞 賞金100万円
『月見里(やまなし)』
木村航
24歳 東京都 64P
ストーリー
潜入捜査官としてヤクザの広瀬川組に潜り込んだ刑事・月見里。上司の新川と交わした実弟の捜索という成功報酬のため、月見里は過酷な任務に身を投じていく。弟分のポンに支えられながら、ついに薬物取引の計画を突きとめる月見里だったが‥‥。果たして無事、弟と再会することはできるのか。
ちば先生の選評
シナリオ、演出、キャラクターの描き分けなどしっかり組み立てられていたね。じっくり時間をかけて作り上げられた作品で、一本のTVドラマや映画を観ているように感じる力作。欲を言うなら、どのコマもいつも緊張していて、過剰な演技が読み手を疲れさせてしまうところがあったかな。ポンのような愛着のあるキャラクターまで緊張して動いているように見えたので、そこがちょっともったいなかったね。
2018年12月3日(月)発売 ヤングマガジン1号掲載!
優秀新人賞 賞金50万円
『永遠に君を愛している』
末太シノ
28歳 東京都 44P
ストーリー
不老不死の肉体を持つ青年・ハル。どれだけ愛してもいつかは忘れてしまう現実に、永遠に続く愛などないと絶望しながら生きていた彼は、ある時ユキという少女と出会う。共に暮らす中でお互いに惹かれあい、幸せな時間を過ごす2人だったが、不老不死を巡る不穏な影が、すぐそこまで近づいているのだった。
ちば先生の選評
不老不死の身体を得た男が直面する、繰り返し愛されては死別するという苦悩を描き切れていたね。主人公の永遠に死ねない悲しみからか、捨て鉢のような言葉とは裏腹の情の表現、間の使い方は見事だが、少しひねりすぎて一回読んだだけでは理解しにくいところがもったいなかったかな。
優秀新人賞 賞金50万円
『鈴木の嘘つき』
佐藤賢一
19歳 栃木県 46P
ストーリー
大学を中退しフリーターとして暮らすタカシの元に、ある日「未来の自分」を名乗る男が現れる。酒癖が悪く、女好きな男に不信感を抱きつつも、タカシはその男にどこか見覚えがあった。果たしてその正体とは‥‥。
ちば先生の選評
怠惰な日常を過ごす主人公の前に現れた「未来の自分」を語る男が、実は幼いころ別れた父親だった、というアイディアと設定が面白かったな。嘘つき親子のエピソードにも笑ってしまったね。読後感もとてもよかった。ただキャラクターの描き分けがあまかったのが残念だったね。似たようなタイプのキャラクターでも、もう少しわかりやすく描き分ける表現力がほしかったな。
優秀新人賞 賞金50万円
『STONE COLD』
マナカミユイ
50歳 東京都 58P
ストーリー
人を愛すると石化してしまう病「メデューサ病」が蔓延する世界を旅するジェーン。恋人を病で失った彼女は、生き残ってしまった自分の愛は本物ではなかったのかと思い悩む。そんな中訪れたワシントンで、ジェーンはメデューサ病を研究する科学者の少年・ライアンと出会う――。
ちば先生の選評
お話の設定、アイディア、ストーリー展開とすべてがしっかり出来ているし、その中に織り込む人物たちのエピソードも上手だったね。それだけに、絵のタッチや演出、構図が機械的で硬く、ぎこちないのがもったいなかったな。人間の自然な動作が描けるようになったら、もっと感情移入して読めたと思うので、そこが惜しかったね。
準優秀新人賞 賞金30万円
『校庭の宇宙人』
コンドウ十画
26歳 東京都 60P
ストーリー
地球に正体不明のロボットが飛来してから35年。国防省に努める沢渡は、ついにロボットに干渉する兵器の開発に成功する。その情熱の裏には、かつてロボットの傍らで亡くなった親友・田辺の存在があった。田辺はまだロボットの中で生きているのではないか、そう考えずにはいられない沢渡。その答えも出ないまま、沢渡はついに実験の日を迎える。
ちば先生の選評
宇宙からの使者、ロボットや侵略者、学内のイジメ、家庭内暴力などたくさんのお話が読めて楽しかったな。ただ、詰め込みすぎてテーマが分かりづらくなってしまっていたのがもったいないなぁ。1つのエピソードを、しっかりわかりやすく読みやすく表現できるようになってほしいな。
準優秀新人賞 賞金30万円
『小人の住処』
中原ろく
33歳 福島県 44P
ストーリー
人間に寄生して生きるシノ。自分たちの狡猾で非情な側面を嫌いながらも、生きるためにほかの仲間たちと同じように、人間を利用して暮らしていた。今回のターゲットは父親失格の烙印を押された男。一見すると救いようのない男なのだが、娘を想う男の本心に触れていく中で、シノは次第に揺さぶられていく。
ちば先生の選評
人間の身体に住み着く細菌や細胞、臓器や血液などを小人にたとえた設定が面白かった。SF的な話と、ダメな父親と娘の日常の話を絡ませたアイディアもよかった。ただ、どのキャラクターに気持ちを乗せて読めばよいのかちょっとわかりにくくかったのが惜しかったな。