総評
応募数増!! 特に若い才能に恵まれ、高レベルな作品多数の第74回ヤング部門!!
ちばてつや先生総評
今回は若い才能が増えて、絵のレベルも高くて、応募数も増え、賞のレベルを押し上げてくれた回でした。非常に実力が拮抗していたため大賞を出せませんでした。それぞれ個性が光り、描きたい世界観が明確。ただ、「わかりにくい」漫画が増えている傾向にあります。読者に読んでもらって、理解してもらって「なるほど」となってもらうのが漫画のいいところ。雑誌に載ることを意識してストレートな作品を描いてくれるといいなぁ。
準大賞
『☆徒羅印』
薩美佑
21歳 千葉県
ストーリー
ヤンキー漫画をバイブルとし、ツッパリやタイマンに憧れて、小学校の頃から筋トレや髪型作りにいそしんだ善之介。夢のツッパリハイスクールを目指し、授業と宿題だけはきっちりこなすうちに首席で進学校に入学してしまった。学校に唯一いた最強の男・誠一郎と出会い、憧れの初タイマンをするのだが‥。
ちば先生の選評
ヤンキーに憧れる主人公・善之介も一途でおっちょこちょいでいいキャラクターだが、ヒロインの夢ちゃんやケンカ最強の兄・誠一郎に色気があって非常にいい味をだしているね。アクションはもうひと踏ん張りだが、大事に育ててほしい作家さん。リアルな日常をより表現できるようになれば、わくわくするようなドラマが描ける楽しみな才能だ。
2016年6月13日(月)発売ヤングマガジン第28号掲載!
優秀新人賞
『かいぶつのいえ』
森ノ宮男子
28歳 東京都
ストーリー
巨大生物・ヨドミの頭部に日常空間が存在し、そこで生活する増田ココ。彼が起床し、お湯を沸かし、朝ごはんを調理するとヨドミが活動を始め、街は破壊されていく。軍隊がヨドミ討伐のために出動するが、女兵士がヨドミに食べられ、その日常空間に入り込んでしまう。
ちば先生の選評
普段の生活で、テレビ鑑賞、暖房の利用などの「楽」をする事はたくさんの犠牲の上に成り立っている。すなわち、自分が生きている事は「罪」である。というメッセージを含んだ作品。また、「ひきこもり」の頭の中を具現化したようにも感じる、含蓄のある意味深な作品。もう少しストレートに表現してもいいかもね。
優秀新人賞
『君の心が飢えないように』
クロキケイコ
30歳 広島県
ストーリー
デリヘル「おブスの巣窟」で面接や受付等をするミクのところに源氏名「バカ」ちゃんが入店。ミクのホスト時代に恋人同然ながらも借金苦による自殺に追い込んでしまった真奈と重ねてしまう。そんなバカちゃんが失踪し・・・・。
ちば先生の選評
主人公のミク、店長、バカちゃんなどの登場人物も風俗業界も実にリアルに描かれていて、引き込まれてしまう作品。人物配置や演出が巧み、故にラストもハッピーエンドにせず、含みを持たせているところに味があるね。やや重いテーマだが、シリーズで人間模様を読んでみたいぞ。
2016年7月6日発売 ヤングマガジン サードvol.9 掲載!
優秀新人賞
『第三次元セカイ系大戦』
かがみ大
28歳 徳島県
ストーリー
ヲタクでワキガの高校生・近藤ひろしは「脇下フェロモン分泌が人より多い、故に男性力高し」と自己評価。2次元の女性に逃げ込んでいたが、鼻炎ゆえに匂いを感じないヤンキーの彼女・美依の屋上SEXを見て、不覚にも反応してしまう。
ちば先生の選評
三次元の女の子に愛想をつかし、つかされ、自分の思いのままになる二次元世界で理想の相手を創って生きる主人公・近藤ひろしのキャラクターと日常がリアルでよく描かれているね。誰もが閉口するWAKIGAに無反応だったセクシーな美依の出現に、心ならずも三次元に戻ってしまう展開や設定もおもしろい。
準優秀新人賞
『アイシウム』
伊藤聡志
21歳 京都府
ストーリー
優実の母は人体に羽が生えることを可能とする粒子を発見したが、実験の再現ができず、論文捏造と非難された過去を持つ。母の研究室で羽が生えたネズミを発見。時を同じくして怪物が観覧車を破壊するニュースを見た優実は不安になり怪物の元へ向かってしまう。
ちば先生の選評
非常にわくわくさせるが、世間やマスコミからの目を異常に避けて暮らす母のエピソードが入るとグッとよくなったね。人物もストーリー設定も背景もしっかりできている。ラストは力ではなく科学者として頑張る母を描くともっと読後感がよかったかもね。
準優秀新人賞
『煙の友』
森内ケイト
20歳 神奈川県
ストーリー
チビで冴えないシン。なぜか学校一の問題児グループに仲間と認識され、仲間の証として万引きを強要されるが、バレて捕まってしまう。駆けつけたファミレスの雇われ店長の父親の人生訓に胸を打たれ、心境が変化していく。
ちば先生の選評
不良とつるむシンはいじめられないギリギリの位置にいる。賢く立ち回っているつもりだが、万引きさせられ、店員に捕まえられた時の父の行動や言動に、強く胸をうたれる。少年たちの微妙な駆け引きや不安定な心情をうまく描けている。
準優秀新人賞
『サブリミナルブルー』
武内由
26歳 神奈川県
ストーリー
灰の降る町で主人公・るり子は、ハンターの父親の死後、外出せず、大きな青い猫・ガルガンが観た景色を脳内に映すことだけを楽しみとしている。そんな中、猫は成長期には人を食べてしまうのでハンターの処分対象になり、猫の一斉討伐が始まる。
ちば先生の選評
主人公のるり子は可憐でかわいいし、青い猫・ガルガンもかわいい。作者が持つ独自の世界観が読者を迷わすことなく、いかにも存在しているようにダマす工夫ができるともっといいね。
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期待賞
『あの子が泣いていたのは』
大石
21歳 栃木県
ちば先生の選評
皆が興奮する中、女の子ひとり涙する所や吹き出しで細かく分けてキャラ立てする所など演出力が高い。
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期待賞
『愚かものの』
竹矢
24歳 東京都
ちば先生の選評
アンドロイドが秘書から対等な人間になったシーンからの、一気に現実に戻される描き方が秀逸。
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期待賞
『仮面少女』
佐俣ユミ
33歳 東京都
ちば先生の選評
少女が仮面をつけている時と、仮面を外した時のギャップの描き方は怖くなるくらい見事。
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期待賞
『現代式魔女見習い』
夕木健太郎
27歳 埼玉県
ちば先生の選評
ありふれた魔女設定を、今までに見たことない形に仕上げていた。ラストの演出もステキ。
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期待賞
『掘る』
渡辺悠
33歳 東京都
ちば先生の選評
画力の高さと24Pとは思えない構成に新人離れした筆力を感じる。削ぎ落とし力は1番!
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期待賞
『モグラと雨の日に』
優輝光太郎
21歳 茨城県
ちば先生の選評
異世界のリアリティ感がある描き込み、魅力的な女の子、モグラのキャラ、好きな物を表現する姿勢がよい。