第63回ちばてつや賞-ヤング部門-発表|講談社コミックプラス
 
     
  今回、最終審査に残った作品はどれも実力伯仲! 群雄割拠の作品群から、主人公の感情がストレートに描き切った『マイリアル』が、見事大賞に選ばれたぞ! 筆者の大槻純平選手は、初投稿で大賞受賞の快挙達成だ!!  

 
ちばてつや先生
 

ちばてつや先生総評

どの作品にもそれぞれ光る部分があり、いつも以上に紙一重の選考となりました。それぞれが大賞の素質を持っていたと思います。ただ、短編の難しさなのか、少しクセのあるキャラクターが多かったですね。読者が共感して声援をおくりたくなるような、存在感のあるキャラクターを作ってほしいと思います。


大賞

『マイリアル』大槻純平(26歳・東京都)
大賞
2010年ヤングマガジン52号掲載!

ストーリー

大学生のマサアキは、2ヵ月前、彼女であるミナコとのドライブ中に交通事故を起こしてしまった。事故当時の記憶を思い出せずにいた彼だったが、外傷は完治してミナコと共に復学。しかし、そこで彼を待っていたのは、いぶかしげな視線を向ける学友たち。いったいなぜ‥‥!?
 

ちば先生の選評

ストーリーの中盤まで徹底して主人公の視点からのみストーリーを追っていくので、この話の裏にある真相に気づかず、まさかの展開にすっかり騙されてしまったよ。後半のドロドロとした主人公の苦悩もリアルで、彼の切ない気持ちが痛いほど伝わってきてきた。終盤で、主人公が立ち直るキッカケのシーンを描けば、もっと良くなったかもしれないね
作品を読む!
 

優秀新人賞

『今どきの向日葵たち』末吉誠(25歳・東京都)
優秀新人賞
2011年ヤングマガジン2・3合併号掲載!

ストーリー

受付嬢として働くなっつは、芸術家を目指す彼氏・滝沢と同棲生活を送っていた。しかし、夢を追いかけてばかりで働かない滝沢への不満がついに爆発。彼の作品をゴミ袋に詰めて投げ捨て、部屋を飛び出してしまうが‥‥!?
 

ちば先生の選評

人物の造形、背景のタッチ、コマ運び、どれをとっても手馴れた実力者。ストーリーも練り上げられているのがわかるし、演出も見開きを効果的に使ってとことん魅せてくれている。作品全体から情熱が伝わってくる力作だ。

作品を読む!
 

優秀新人賞

『大蛇と瑠璃』首藤大樹(21歳・神奈川県)
優秀新人賞

ストーリー

凄腕の女殺し屋オロチは、ひょんなことから拾い子のセツを自分の手で育てるハメに。憎まれ口を叩きながらも、セツとの絆を育んでいくオロチ。しかし、安らぎを得た殺し屋に、復讐者の影が忍び寄ろうとしていた‥‥!!
 

ちば先生の選評

新人作家にはなかなか難しい時代劇なのに、コマの隅まで手抜きなくしっかり描き込んでの挑戦は努力賞もの。面白い作品を作ろうというエンターテイメントの姿勢も素晴らしい。戦を憎む心情は、もっと強調しても良かったかな。
作品を読む!
 

準優秀新人賞

『秋の夜長にふたり乗り』木崎直介(29歳・東京都)
準優秀新人賞

ストーリー

東京から転校してきた岡部は、性悪女として、クラスではちょっと浮いた存在の女の子。主人公・木下も、なるべく関わらないようにしていたが、ある日一緒に下校することになり‥‥。
 

ちば先生の選評

キャラクターのさりげない仕草やセリフに、細やかで鋭い観察力を感じる。ヒロインが主人公と出会ったことで、ラストではあの仏頂面が笑顔に変わりそうな予感がしてホッとした。
作品を読む!

準優秀新人賞

『ホク毛とFカップ』 西川岩茸(33歳・兵庫県)
準優秀新人賞

ストーリー

尊敬するホク毛先輩の「おっぱいは魔物だ」という教訓から、禁欲を貫く野球部エース。ところがFカップの巨乳マネージャーと、変化球の特訓をすることに!? 最大の危機を乗り切れるか!?
 

ちば先生の選評

積極的で、ちょっと神秘的でセクシーなヒロインが魅力的。主人公も、なかなか芯があり、男臭くて魅力のあるキャラだ。構図やコマ運びが上手いので、最後まであっという間に読んでしまった。
作品を読む!
 

佳作
『カッパのいるところ』早川宏紀(22歳・愛知県)
佳作

ストーリー

高校受験を前に、将来に漠然とした不安を抱く主人公の哲夫。3年ぶりに偶然再会した友人の篤司は、変な格好でカッパを捜していた!

選評

国の干拓事業を背景に、不思議な生物を登場させるという発想はなかなか奇抜で面白い。とにかく「カッパ」のデザインが強烈だった。
 
佳作
『DOUBLE HOLE+1』河野ナホヤ(21歳・大阪府)
佳作

ストーリー

部屋の壁に小さな穴を発見した拳士郎。覗いてみると、そこには下着姿の女性が! 引きこもりの隣人との、不思議な交流が始まる!!

選評

若者の抱く悶々とした悩みや、小さな穴から漂う猟奇的で妖しげな雰囲気が上手に描けている。のぞき穴を通じた愛という発想も面白い。
 

佳作
『父の見た空へ』ひとみ内美まどか(24歳&30歳・沖縄県)
佳作

ストーリー

輸送艇とともに空に散った父の死を、なかなか受け入れられずにいたジョルジュ。父の跡を継ぎ、飛行機に乗ろうとする姉に彼は強く反発するが‥‥。

選評

表情豊かで爽やかなキャラクターたちの描写には、大いに将来性を感じる。コマ運びや構図も的確だし、演出も上手いので読みやすかった。
 
佳作
『トリエとトキ』神戸一仁(29歳・静岡県) 
佳作

ストーリー

トリエは鳥を愛するちょっと変わった女の子。そんな彼女のクラスに、なんと股間が鳥のトキになっている男の子が転校してきて‥‥。

選評

小ネタやセリフのセンスはプロ並み。キャラの設定もバカバカしくてインパクト抜群だ。可愛げもあって、彼らの言動から目が離せない。
   
期待賞
『アルティスト』安部光(19歳・大分県)
期待賞

選評

ヒロインの仕草がとにかく可愛い。一挙一動に彼女の魅力があふれている。彼女のために頑張る主人公の気持ちがよくわかった。
 
 
期待賞
『AVブレイン』池本昌弘(24歳・愛知県)
期待賞

選評

「AVを一緒に観たい」と言い出したヒロインの、ドキッとするような発言の連発に翻弄される主人公の心情が上手に描けている。
 
     
期待賞
『オヤコモンダイ』伊良波リサ(21歳・神奈川県) 
期待賞

選評

複雑な人間関係ながら、読者に混乱を与えずに話を進める構成力はセンスを感じさせる。何か事件が起こりそうな設定作りも上手い。